阿蘇・鷲ヶ峰北稜ルート  (2009年2月7日) 
  
■あっと言うまに過ぎてしまった一月、寒さは本番を迎えるはずの2月初旬なのに九州エリアでは小鳥が囀り、今にも蝶でも飛び交いそうな陽気に包まれている。
 これはどうも九州だけに限らず、日本全国的な現象・・
顕著な暖冬なのかもしれません。そんな中、前々から計画していた京都の山友との合同山行 in
 火の国阿蘇&パノラマ久住の週末がやってきた。

 当初の予定では九州の雪&氷エリアを満喫しようと、阿蘇北面の赤谷付近をアイス混じりの登攀を計画していたが、ここ最近のポカポカ陽気で期待薄。
 数日前に仙酔峡ロープウェイの管理事務所に電話して、
「今、そこから高岳見上げたら何色に見えてますか?」と聞いてみると、「真っ黒ですよ♪」と即答された・^^; 
 先週中ごろにかなりの雨が降ったらしく雪も氷も落ちてしまった模様。京都チームに 「バイルは要らないよ」 と伝えるべきなのだろうけど、百に一つ、千に一つの
 ミラクル・・大滝だけでも残ってないか・
との淡い期待と、強い放射冷却を夢見ていたのであります。しかしながら、現実から目を背けるわけにも行かず、乾いた状態を
 想定した目的先候補、途中まで赤谷と同じ行程を辿る「鷲ヶ峰・北稜ルート」を取る事とした。 


  さて今回のラインナップ、まず京都チームは経験豊富なアルパインクライマー府岳連系”京都下京山岳会所属の“皇后様”・・今年の正月には国内屈指の
 ロングアルパイン・アイスルート「南ア・岳沢」を踏破された府岳連系”京都下京山岳会”ツワモノと、今年既に数々のアイス登攀・岩稜登攀をこなしてきている
 マルチパーパス「O型人間クライマー」府岳連・京都雪稜クラブの“いなっち”と言う強力なタッグ。

 一方、九州チームはちるちるミチヲとぶぅぶぅ綾吉に私の「エセ関西弁トリオ」。今回、赤谷から2ガリーへの取付き付近は知っているものの、1キレット以降のルートは
 初見である5名での取り組み。
意識レベルの仕上がりは高い・・・ 九州を代表するアルパインクラシックルート、気合引き締めて攀じる事とする!

■淡い期待とは裏腹に、底冷えのしない仙酔峡駐車場に到着したのは金曜の深夜。今にも落ちて来そうな満天の星空を見やりながら、月明かりに浮かぶ鷲ヶ峰の
岩稜尾根に視線が這い回る。軽く明日の行程など話しながら今夜は早々に就寝。

翌朝晴天、仙酔峡にじゃーじゃー流れる渓流を見て「アックスは要りません。各自ハンマーバイル1本のみ持参」を告げ、装備を整える。暖かいと言っても2月初め・・
ベルグラの予想は外すわけにはいかない、アイゼンは必須。これまでも何度か
想定した事はあるのだが、今回は鷲ヶ峰北稜にはとても自然に「一歩」を踏み出せた。
この感覚が無い限り
私は一歩目を踏み出さないようだ・・臆病者だからね^^; 昨夜から一緒だったふたすじさん、天唐さん、早朝合流のひなさんと共に仙酔尾根を登り、
鷲見平で一旦お別れ・・・
高岳山頂での再会を約束しつつ、我らは赤ガレ谷関門方面へ下る。

■赤谷F1付近から左手に詰め上がる。                                          ■正面に1キレットが目視できるが「→」が右方向へ誘う?

●全くの無雪期にここを登るのは初めて・・^^;雪が付いた状態とは一風違う雰囲気に、殺伐とした無機質な印象を感じながら、赤谷F1右岸から2ガリー方向へ分け入る。


■矢印通りにトラバース岩峰を巻き上がるように進むと・・・                  ■ボロボロの岩場を1P登る羽目に・・^^;
  
●2ガリー方向へは目標の1キレットへの目視が効く為にスムーズに進めるが落石の多い不安定さは常に注意を払わなければならない。 目前にジャンの基部が見えた。
このガリーを詰めあがればもうすぐだ・・と言う所で
右方向に矢印「→」がある・・その先にももう一つ矢印。ひょっとして目前の岩場を回りこむのか?等と思いつつ右手に進み
上部に向うと、10m程の岩場に当たる。これがボロボロ・・^^; 騙し騙し登るが掴む石が見事に
剥れる。やはり先ほどの矢印の地点を直進だ・降りようにも不安定な岩場で
困難な為、体制維持用にハーケンを
1枚打つ。これを支点にクライムダウンするかと思ったが、そこそこ効いていそうなのでランニングとして登り上る。上がった先の台地の
右手目前に3ガリーが見える。左手に回り込んで2ガリーへ進むルートは
かなり微妙・・ここで3ガリー詰めへ変更・転進する。


■ボロボロ岩場を登るいなっち。                                 ■ぶぅぶぅ言いながら綾吉も登る。
 
 ■皇后様・・・忝いです。。m(_ _)m
 

●付近のブッッシュを支点に懸垂下降。5人降りてザイル回収を試みるが支点にメインザイルが締まり込んで回収不能に・・困った。イナッチがマッシャースリング&
タイブロックで
登り返し、支点の具合を整えるが、支点位置と懸垂下降位置が離れている為に捨て縄にザイルが食い込むのだ。
 ■ガリー3を詰める。
 
 ■赤壁取り付き点
 
 ■支点位置からイナッチのビレイで私も登り返し、ブッシュからの支点位置を懸垂下降地点付近までスリング連結延長する。イナッチが下降しザイルを引く・・・
 今度は大丈夫のようだ。 私も下降〜ザイル回収。ふぅ〜・・・1時間程のロスとなってしまった。あの矢印は ノーマルルートへの指標だったのだろう。 
 気を取り直して落石の巣窟=3ガリーを詰める。直線上に並ばないように細心の注意で!

 ■3ガリーを詰めるとジャンの右側基部・・ジャンダルムのコル、赤壁の取付き点に出た。ここで登攀装備を身に纏い、行動食補給。 ザイルオーダーは、
 イナッチ&皇后の京都隊、福岡隊に分かれて二人、三人のパーティーで登る。行動の
迅速さを考慮しスピーディーな京都チーム先発とする。


■赤壁1P :いなっちリード〜以降、皇后様とツルベ。今回いなっちは新調の登山靴である事と冬季岩稜登攀はアイゼンの方が慣れている、と言う事でアイゼン装着。
ポリシーが明瞭、迷いが無い。  
福岡チームも問題なく通過。≒20m上部台地のピナクルでビレイ。広場を歩いて北稜の取付きまで移動。

●アイゼン登攀いなっち。                    ●私は冬靴で登攀・・他のメンバーも全員登山靴。     ●ミチヲ・スイスイ♪


■北稜1P : 中央に見えるピンを目指す、2ピン目以降若干右よりに振れて直上〜広い終了点には綺麗なペツル並行ピンが打ってある。

■北稜2P : 中央から直上、錆びハーケンからペツルを拾い、左よりの浅いガリー方面に進む。岩稜の色合いと同化した「昭和枯れススキハーケン」に
         肝を試される。1.5人がやっとの終了点。ここもハンガー並行ピンが打たれてあった。


■北稜3P : 右よりに出て直上問題なし。 広い終了点に綺麗なハンガー。登攀中に赤谷ダイレクト尾根付近に3人組みパーティーが取り付いているのが見えた。
         この条件下では厳しい登攀だろうなー。


■北稜4P : ザイル無しでも行ける岩稜を10m程で右手に並行ピンを見る。イナッチはここでピッチを切った。山頂へは左手の岩の間にブッシュが見える地点を
         登ると鷲ヶ峰山頂に飛び出す。

■北稜1P皇后様リード。                                      ■ここは中々丈夫そうな感じの岩でしたが・・^^;
 
 ■ビレイ点の稲造♪
 


■2P 肝を試そうとするハーケンの箇所・・・^^;                       ■この辺りを直上したくなるが・・左よりにルートは開く。
 

 ■ちるちるミチヲ、渾身の登攀
 


  ■ビレイ点、皇后さま♪                                       ■二人でいっぱいの2P終了点
      

●3P 高度感抜群! 綾吉登攀。                                                     ●4P 山頂へのウイニングラン、ミチヲ、綾吉。
 




■鷲ヶ峰山頂お疲れ様でした!いやぁ〜、いなっち、皇后様お待たせ致しました!感動の登攀の末に広がる素晴らしい展望◎絶景。しばし余韻に浸りながら記念撮影。


        ■鷲ヶ峰山頂から高岳縦走路に登山者が見えたが、何と天唐さん、ふたすじさん、ヒナさんだった!待っていてくれたのだ♪ ありがとー!
        



■2キレットへの懸垂下降点・・・ニードルが印象的だ。 真下に下りて右手側にトラバース。         ■2キレットから天窓への登り返し。安全第一、ザイルを張る。



■高岳縦走路までのナイフエッジ・・思わず尾根にまたがりたくなるような緊張の区間が続く。ガレガレのナイフエッジをやり過ごしてブッシュが見えてきたらもう近い。
 


      ■この角度からの根子岳は圧倒的存在感がある。 存在感では負けない綾●。。。^^;
      



■縦走路手前のピナクルからいなっち♪                               ■ミチヲさん明日もヨロシクね〜♪
 
 ■皇后様、この度は大変お世話になりました。
 



■感動のフィナーレ! 高岳縦走路で皆さんと再会! 大変長らくお待たせを致しました。紺碧の青空は最後まで見送ってくれた。 ピークハンターいなっち&ミチヲ☆



■ご帰還ビールを回し飲む かしまし娘♪ (運転手はアタシです・^^;)

■鷲ヶ峰北稜ルート完登! 皆さん本当にお疲れ様でした。今回冬期登攀目的としては
 残念ながらの暖冬で雪も氷も蹴れませんでしたが、それでもそれ以上の感動&充実感に
 満たされた登攀だったと思います。
 九州を代表する火の国・阿蘇・・その中でも険悪な岩稜地帯で名を馳せる鷲ヶ峰の神様は、
 今回は微笑んでくれたようです。 もったいないような晴天と、展望をも与えてくれたのは
 日ごろの行いの良い善男善女のなせる業でありましょう♪ 高岳山頂付近で長時間待って
 いてくれた天唐さん、ふたすじさん、ひなさんありがとうございました!
 縦走路で待っててねぇ〜・・・ と言う期待感が背中を押してくれていたようです。

 さてさて、今夜は旨い酒が飲めるぞ〜! しかも山の仲間が集まる場所で盛大な
 懇親会が待っているのであります◎

 これ以上の幸せはありましょうか♪ それでは皆さんまた後で会いましょう◎




                                
<Photo  By Ayakichi & Sawa_Gourmet>







■時  期  :  2009年 2月 7日
■地  図  :  阿 蘇 山
■メンバー :   皇后様、 いなっち、 ミチヲ、 綾吉、 沢グルメ (鷲ヶ峰北稜)
           天唐渓遊、 ふたすじ、 ひな  (仙酔尾根〜高岳〜中岳)







                                                          





























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