雄鉾(おんぼこ)・左稜線 マルチルート

■宮崎県高千穂地区の山間部、上鹿川地区には、麓の集落を見下ろすように聳え立つ特徴的な岩峰を見る事が出来る。 雄鉾(おんぼこ)の勇士である。
 スラブ登りで有名な雌鉾(めんぼこ)の隣に立つ雄鉾(おんぼこ)は、四季折々の自然を求める登山者に広く親しまれ、この界隈の渓谷と共に人気の
 エリアであるが、麓から見渡せる雄鉾の正面壁を登った・・・と言う登攀の記録を最近は見た事が無かった。
 九州宮崎のクライミング基地@鹿川庵の記録にも、『人工時代にルートが拓かれて以来、 現在では全く登られていない」・・とあり、1995年に庵鹿川の
 三澤氏、工藤氏他数名の手により右側スラブがトレースされて以来、2登目が無く現在では下部のピッチは自然化とブッシュにより登攀不可能となっているようだ。
 この岩壁の正面からスッパリ山頂に抜けられないものか・・と、偵察を重ね、左側の岩壁にある顕著なフレーク付近にフリーの可能性があると見た我々は、
 この左稜線から山頂に抜けるラインの着手に向かった。



●見当をつけ藪を歩いて行くのだが、沢登りの下山時に見られる藪程では無く、むしろ快適とも言える原生林歩きで意外とすんなり左稜線の末端スラブに辿り着けた。
 取付き点から見える見事なスラブと奥に聳える絶壁にしばし見惚れていたのだが、1ピッチ目を登る過程において、かつて打たれたRCCやリングボルトを発見、
 やはり九州(?)のクライマーは
既に取り付いていたようだ。 先人のクライマーに敬意を表しつつ,慎んで迂回再生させて頂くべく、フリーで登れるラインを模索し蛇行しながら
 間隙を縫うように岩壁にへばりついた。


         



■アプローチ : 鹿川キャンプ場から鉾岳・鬼の目山への登山道を取り歩く事 約25分〜30分の地点、雌鉾スラブ取付き点の少し手前から左手に侵入、
           ケルンと赤テープに導かれながら進むと
雄鉾の右スラブ末端に出る。 ここを通過し更に雄鉾の裾野を巻くように進み、短い急斜面
           登り上げると左稜線末端のスラブに出る。 ここまで一般登山道から分岐して≒30分。


■1P  30m (X+) : 顕著なスラブを直線的に登る。途中手がかり足がかりの少ないドスラブ登攀で進行方向 左手に終了点。

■2P  40m (X−) : 出だしは少し右手に展開し、その後は直上〜クラック沿いを直線的に登り、ワンポイントのブッシュを通過する。 
                 ブッシュを抜けた後、短いフェースを登り左手にトラバースして終了点。

■3P  35m (Y+A0) : 傾斜の強いフェースを直上し、上部のアンダークラックの位置から右に乗越し、更に凹角沿いをチムニーを交えながら登る。
                   右手に乗越た先の草付地点に終了点。

■4P  35m (Y+A1) : 出だしは左手にある明確なフレークを辿り、登り上ががった地点から右側にトラバースし大フレーク末端に立つ。ここからピンに
                  導かれ直上。フレークを上手く利用しながら
登り上がり、右手に乗越た草付でピッチを切る。このピッチのフリー化が最大の課題か!?
                  現代のクライミング技術から考えるにフリー化は充分に可能である・・と思うが。。

■5P  25m (X+A0) : 傾斜の強いフェースを登りクラックの走る小ハングを右側に越え、短いフェースを繋いで左手の明確なフレークを取る。
                   後は快適なフレーク登りで終了点まで。

■6P  30m (X)  : 出だし傾斜の強いスラブフェースを15m程直上すると傾斜が緩み、山頂台地の一角に出る。ブッシュから右手方向に登ると
                 鉾岳山頂にピッタリ出るので山頂付近の立木で最終ピッチを切る。
晴れていれば素晴らしい展望が約束される。


※下山は鉾岳一般登山道を下り、鹿川キャンプ場まで帰着するのが良い。

※参考装備 : クイックドロー x 10本以上〜、 アルパインドロー x 3セット以上、 キャメロット #0.5〜 #3まで1セット、 スリング適宜数本。




      




■数年前、親しい友と雄鉾を見上げながら、「あそこを登ろう!」・・と、夢を語りあった。 今回、頼もしい仲間に引っ張られながら雄鉾の山頂に立てた事は
 感慨無量・・・ 本当に嬉しい事でした。 陰になり表になり応援してくださった皆さんに心から御礼申し上げます。 ありがとうございました!


※雄鉾(おんぼこ)の特徴
比叡・矢筈・鉾岳(雌鉾スラブ)の岩壁はどれも、渓谷の両岸が発達して出来た岩壁やスラブ壁である為、眼下には美しい網の瀬川・ 鹿川の渓谷が広がり
対岸に聳える岩壁や、山肌が景色として楽しめるのに対し、 雄鉾(おんぼこ)は、平地の真ん中にポッカリ立っていて、その正面壁は麓の平野部を向いて
いる為に、一際 展望が広がり、広大な景色が満喫できる良いロケーションとも言える。 四季折々の景色は素晴らしいの一言ではないだろうか。








<雄鉾・左稜線 6ピッチ   再生ア・ラ・カルト>  

■2012年10月28日(小雨)   iso, sg  :  着手するも小雨の為、アプローチと1ピッチ目出だしのみ整備。
 
              


■2012年11月 4日(晴)   iso, ohji, sg  : 
1ピッチ〜2ピッチ完成。 3ピッチ出だしまで整備。

               


■2012年11月10日(曇り)  iso, cha, sg : 3ピッチ完成。 4ピッチ出だし、大フレークまで整備。

               


■2012年11月25日(晴)  iso, cha, kero, sg : 
4ピッチ完成。 2ピッチ目の草付除去〜ルート掃除。

               


■2013年 5月26日(曇り)   iso, aya, sg  : 5ピッチ〜 6ピッチ山頂まで完成。 ルート開通。

                   










■開  通  :  2013年  5月26日

■メンバー  : 磯辺(iso)、 真田(ohji)、 千々和(cha)、 大串(kero)、 坂根(ayakichi)、 勝野(sg)









                                                               

























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